47人が本棚に入れています
本棚に追加
ハラはすぐに行動に移した。いつまでも泣いている暇はない。
自分の中にいる精霊に呼びかける。
そこからはあっという間だった。気がつけば扉が炎に包まれていた。
兵士が騒ぐ声が聞こえてくる。扉を開けようにも炎で近付けないのだ。
ハラもしばらくは扉が燃えるのを見守るしかなかった。やがて炎は天井を這い、部屋全体に広がった。
煙に咳き込み、目を開けていられなくなった頃、数人の兵士が扉を壊して飛びこんできた。
その向こうにドロスの姿がある。
「なんてことをしてくれる……!」
ドロスの怒声を聞いてもハラは恐れることなくその目を見返した。
ハラは部屋の外へ、そして建物の外へと連れ出された。
「ここはお前の母の墓所だと言ったはずだ!火を放つなど何を考えている!」
ドロスは苛立ちに声を荒げ、もはやハラを敬う素振りも見せない。
「伯父上、今すぐマナ石を元に戻してください!」
ハラは負けずにドロスに詰め寄った。
「もう遅い。あれを見ろ」
ドロスはそう言って荒れ地を指さした。何も動くものなどないはずの荒れ地に、いく筋もの何かが躍るように動いている。
「あれは……」
「行き場を失った精霊たちが荒れ地で暴れているのだ。さぁ王女様の出番だ。今こそ王族の力を見せつけるのだ」
ドロスが何を言っているのか、ハラにはすぐに理解ができなかった。
あれほどに怒り狂う精霊をどうしろと言うのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!