47人が本棚に入れています
本棚に追加
そこには運河が流れ、ハベルや他の国を往来する船が浮かぶはずだった。
ハラはそのために今まで心血を注いできた。
それは荒れ地に精霊を呼び戻すことにも繋がるはずだった。
決して町から、村や森から精霊を追い出すためではない。
ましてや、自分にどんな力があると言うのだろう。
精霊の声を聞き、人々の声を伝える。ただその橋渡しをする力しか与えられてはいない。
怒り狂った精霊を鎮める力など持ち合わせていない。
「伯父上、あなたは誤解している」
「誤解?」
「王族は精霊を従える力など持っていない。あるのは共に生きるという約束だけ」
「それを宝の持ち腐れと言うのだ。見てみろ。たかがマナ石で精霊は動かせる。精霊が見えずとも、あの竜巻を見れば一目瞭然。上に立つのは我等だ」
「本当にそのようにお考えか。水や土、風、火、それらなくして生きていけるとお思いか」
ハラは拳を震わせながらどうにか言葉を絞り出す。
「何を言うのだ。それらは人間がうまく使ってこそ価値があるのだ。水や土がなくなるわけではない」
「違う! いい加減目を覚ましてください」
言っても無駄だと思いながらも、ドロスはただ妹であるユナク王妃の死によって道を間違えただけだと思いたかった。
最初のコメントを投稿しよう!