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⑳始まりの架け橋
荒れ地を見渡せる崖の突端まで来て、ハラは足を止めた。
荒れ地に無数に立つ竜巻の渦は何かに操られているかのように、王都から離れていく。
ハラはエルナを呼んだ。
その声に応えて、美しい精霊主はハラの前に姿を見せた。
「どうなっているの?」
聞きたいことは山ほどある。けれど、今一番にすべきことは精霊たちの怒りを鎮めることだ。
「ハベルの王が動いている」
「ラ・ジーク王が? スナリは?」
「王子はあなたを探している」
どこかエルナの様子がいつもと違うように感じて、ハラは足が震えそうになる。
「エルナは大丈夫なの?」
「わたしは、王のそばに」
その声は今にも消えそうなほどか弱く、途切れ途切れにつむがれる言葉も少ない。
「王は今どこに?」
「ゴーゼ、石の牢に」
「トロイはどこ?」
「ここへ、呼んだ。もうすぐ、来る」
「エルナ……」
エルナの姿が色を失っていく。その向こうに黒く光る物を見つけて、ハラは青ざめた。マナ石がこんな所にまで置かれている。
エルナは今どれほどの力を振り絞って自分の声に応えてくれているのかと考えると、ハラの両目から涙が次々と溢れた。
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