⑳始まりの架け橋

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 それはとても不思議なことだった。  未だかつて、荒れ地に雨が降るのをスナリは見たことがなかった。それが今は叩きつけるような雨が乾いた砂地に降り注ぎ、どこまでも見渡せていた景色は雨に烟り、すぐ先も見えない。  どちらに向かって走っていいか分からず、スナリは足を止めた。  国境壁を乗り越え荒れ地に降りたあとは、ひたすらにハラのいるだろう王都を目指していた。どういうわけか、竜巻はみな一方向へ向かって動いていた。  ソニンが誘導しているのかもしれない。  その後は降り出した雨に足止めされ、スナリはびしょ濡れになりながら、全身で水の精霊の声に耳を傾けていた。 「黒い石」「嫌な石」「精霊主が消えかけている」そんな声が重なり轟音となって耳を襲う。 「ハラがどこにいるか教えてくれないか」  スナリの叫びは雨音にかき消される。それでもいくつかの声がスナリに進む方向を教えてくれていた。 「もうすぐ会えるよ」 「ハラもこっちに向かってるよ」  そんな言葉にスナリは容赦なく打ち付ける雨に抗って、力強く歩みを進めた。  やがて雨が止み始めた。辺りは明るさを取り戻し、スナリの視界を広げた。  その先に、一頭の馬が駆けてくるのが見えた。
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