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「スナリ!」
「ハラ!」
びしょ濡れのスナリと、煤まみれのハラは互いに再開を喜ぶ間もなく、二人の成すべきことを頷きひとつで確認し合った。遠ざかっていく竜巻を追うために、ハラの乗ってきた馬に二人で跨ると、なるべく乾いた地面を選んで馬を走らせた。
手網を握るハラの背中に、スナリはいつの間にか自分がその背を追い越していることに気付いた。
それでも、凛とした背中は子どもの時から追いかけてきた背中だった。
精霊の声を聞くために、いつもより研ぎ澄ました感覚に、ハラの周りにいる精霊がこれまでのことを教えてくれる。
スナリは腕を伸ばしてハラの握る手網を掴んだ。
少しの間だけでも休ませてあげたかった。ここまで駆けてくるのに、どれほど力を振り絞ったかが痛いほど分かる。
ここからは二人で進むことができる。ひとりで頑張らなくていい。そのことをスナリはハラに伝えたかった。
しばらくしてハラの背中がふっと緩んだ。雨に濡れて冷えた体にハラの温もりが伝わってくる。スナリはしっかりと手網を握り直し、ふたりはぴたりと息を合わせて荒れ地を駆け抜けた。
「荒れ地を精霊が埋めつくしているわ」
ハラがつぶやく。都を追われた精霊たちが行き場をなくして荒れ地に降りてきている。
だから雨が降る。風が吹く。
どうして今まで荒れ地に精霊がいなかったのか不思議だった。
こうして精霊たちは荒れ地にも雨風をもたらすことができている。
精霊石を使い果たしたとしても、それだけで荒れ地に存在できないわけではない。
「もしかして……」
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