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竜巻が次々に海へと抜けて消えていく。竜巻によって打ち砕かれた防波堤は易々と海水の侵入を許した。
見る間に荒れ地に水が流れ込んでくる。
渦巻いていた風は一斉に国境壁に向かって吹いていた。
土の精霊は流されないように固く手を取り合って壁際を埋めている。風はそれを支えるように吹いているのだ。
「何が起こっているの……」
右手の岸から流れ込んだ海水は国境壁に沿って川を作っていた。竜巻によって掘られた溝を通って勢いよく進んでいく。
「ラ・ジーク、すごいや……」
ふたりは目を見張りその光景を見ていた。やがてその様子を見ようと人々が荒れ地に集まってきていた。
どこからか声が上がる。
「王様バンザイ、王女様バンザイ」
王女の存在など知らないはずの人たちがなぜ、そう疑問に思うも、増え続ける声に押されるように、ハラは王城へと向かった。
スナリもハラを支えるようにそばにいる。
集まった大勢の人たちは確かに歓喜の声を上げていた。
竜巻が、精霊たちの怒りが鎮まったと喜んでいるのか。国境壁に沿って川ができたことを喜んでいるのか。
ハラには分からなかったが、きっとモーラン辺りが何か策を考えたに違いない。ラ・ジークが竜巻を利用して運河を作ってみせたように、モーランは国民たちに王女の存在を知らせる好機としたのかもしれない。
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