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「んじゃまたなー。」
終電まではかなり時間があるけれど、彼女が待ってるから、とマキはヒラヒラと手を振って帰っていった。はい、ご馳走様。
金曜の夜。街はまだまだ賑わっている。
明日は仕事も休みだし、コンビニで酎ハイでも買って海外ドラマの続きでも見ることにしよう。確か前回のラストシーンで主人公が敵組織の秘密の鍵を……
「あっ!」
声をあげてしまった。
数人がチラ、とこちらに視線を向け、すぐにまた何もなかったかのように雑踏に紛れる。
うっすらと冷や汗をかきながらもなるべく冷静にバッグの中を探る。
……やっぱり。無い。
家の鍵、デスクに置きっぱなしだ。
帰りがけに可愛いキーホルダーですねなんて同期の中村さんに話しかけられて、そこを上司に呼ばれて月曜朝一のミーティングの話なんかして……
「あー……やっちまった。」
こんな時に人は舌打ちをするのだろうか。
仕方ない、会社に戻ろう。
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