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友達が死んだ。
橋の上から川に飛び込んでの自殺。遺書などは一切なく、それまで死にたがっている様子もなかったので、事故や他殺の線も疑われたが、目撃者が多数いる中、突如飛び込んだことは確定していて、結局自殺として処理された。
そういえば友達は、死にたがってこそいなかったけれど、半年くらい前から行動がおかしくなっていた気がする。
肉より野菜が好きなタイプだったのに、ほとんど野菜を食べなくなった。かと思えば、最近ちょこちょこ聞くようになった『昆虫食』にやたらと興味を持ち、売っている店に通うようにもなっていた。
それだけならば、食の嗜好の変化ですんだが、友達は、その頃から一本の針金を持ち歩くようになった。
赤錆の浮いた一メートルくらいの針金。なるべく人には見せないようにしていたけれど、肌身離さず持ち歩いていたのを俺は知っている。
何のためにそんな物を持ち歩いているのか。
聞いたが教えてもらえず、それ以降も、色々と疑問の湧く行動を繰り返していた友達は、ついに、自殺という形でこの世を去ったのだ。
本当に、どうしてあいつが自殺したのか、その理由が判らなくて悩んだよ。その結果、俺もおかしなことを考えるようになってしまった。
あの針金…あれをどこかで見た覚えがあり、調べたところ、ハリガネムシという寄生虫の存在に行き着いた。
カマキリに寄生し、脳を操って色んな昆虫を捕食させ、最終的に、ハリガネムシ本来の棲息地である水中にカマキリを赴かせてしまうという虫。
友達は、もしやそれに寄生されていたのではないだろうか。
人間に寄生し、その人物を操ったという話はどこにもなかったけれど、友達の行動を振り返るとこの説に合点がいく。
どんな理由でハリガネムシに寄生されたのかは判らないけれど、あの虫のせいで友達は死んだのだ。
そう思うと様々な恐怖が湧いて、俺はこの先、普通に店に売ってる新品の針金すら、触ることはできないだろう。
寄生虫…完
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