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光輝く明日へ
「こっちの方が断然いいわよ」
かみさんが俺の頭に電気バリカンを当てながら笑った。
「中途半端な薄毛を伸ばしてバーコードにしてるほうがよっぽど悲壮感漂ってるって」
「そうかなぁ」
最後まで残っていてくれた残りわずかな髪の毛を見ながら俺は呟いた。
俺にとってはもはや同志とも呼べるほど、愛着のある髪の毛なのだが、かみさんは容赦ない。
「そうよ。薄くなっていくのを鏡で見て、ストレスになってまた薄くなるって、究極の悪循環じゃない。今はスキンヘッドもおしゃれよ。潔いわよ!」
「そうだな」
俺は髪への未練をたちきるように顔をあげた。
頭頂部の最後の一本が、「プチン」と音をたてて刈り取られた。
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