うそつきヒーロー

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「ホワイト!!お前は住民を避難させていろ!!」 「わかった。避難が終わったらすぐに向かうね。ブラック」 「はっ。お前が戻ってくる頃には、この俺が怪人を倒しているだろうがな!!」 あれから数十年の月日が経ったある日。 突如日本に、怪人が現れるようになった。 身体は人間そのものだが、顔はカマキリで巨大なハサミを使って人間を襲う怪人や、全身ヘドロの様な怪人だったり。ファンタジーの世界に出てきそうなゴブリンの姿をした怪人など。様々な種類の怪人達が人間達を襲い。街を破壊しはじめた。 そんな時。 怪人を倒す者として選ばれたのが、ヒーローを夢見ていた二人だった。 怪人が現れ始めた頃。二人には普通の人間とは違う力が宿っており、その力を使って二人は日々怪人を退治することとなった。 「皆さん、怪人を倒すまでこの中にいてくださいね」 「分かったわ。ホワイトも早くブラックの所へ行ってあげて」 「はい。有難うございます。では行ってきますね。絶対にここを動かないようにしてくださいね」 街の住民を怪人から一番離れた学校へと避難させ終えたホワイトは、軽く頭を下げて、ブラックの元へ急ごうと住民に背を向けた。 だがその後、ひそひそと話す声がホワイトの耳に入ってくる。 「んだよ。弱いくせに生意気言ってさ」 「そうそう。だいたいホワイトがブラックのところに行っても、どうせ役に立たないでしょ?」 「ブラック一人で十分強いしねぇ。ホワイトいらなくない?」 「そうそう。いつも頑張ってるのってブラックだけじゃん?ホワイトはいつも怪我一つしてないし」 「いつも見てるだけなんじゃない?」 「かもね」 心無い住人の声を、ホワイトは聞こえないふりをしてその場から立ち去った。 ブラックとホワイトは二人で正義のヒーロー。 だったはずなのだが、今では世間からの評判が大きく違っていた。 黒いマフラーに黒いライダースジャケットが特徴のブラックは、顔が良く、性格も明るい好青年で、子供や女性層から特に人気が高い。 いつもボロボロになった姿で、最後はかっこよく勝利のポーズを決める彼には、誰もが賞賛の声を上げていた。 しかしそれに反してホワイトは、顔も普通で、どこか頼りがいのない青年。優しさや気遣いはブラックよりもあるため彼を慕う人も少なくはないが、時に陰口を言われることも多々あった。 「おまたせブラック」 「おせぇぞホワイト!!」 だがそれは、彼らが実際戦っている姿を見たことが無い住民のただの妄想と、そして二人が周りを騙すために吐いている嘘で出来上がった虚像だった。
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