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『名無し』の呟きはすぐに削除されたが、既に目にした居る人々は多く。街でも噂になっていた。
「本当なのかな?」
「えぇ。絶対ただのガセだって~~。ブラック様がそんなことするわけないじゃん?」
「お母さん。ヒーローがイジメなんてしたらダメだよね?」
「大丈夫よ。ブラックとホワイトは仲良しだからね」
「俺は元々胡散臭いって思ってたんだよなぁ~~」
「ホワイトもあんな性格だし、マジであり得そう」
あの呟きを信じている人もいれば、勿論信じていない人もいる。
特に有名人の悪い噂と言うのは、誰が勝手に作ったただの作り話という事も少なくないからだ。
ブラック本人も、本来ならそんなくだらない噂話を鼻で笑って、皆が忘れるまで気長に待っていたことだろう。
だが今回のブラックは、あの呟きを見てから動揺を隠せないでいた。
「あの呟きをした奴は一体誰なんだ。なんで俺が虐めたことを知っているんだ」
実際ブラックは中学生の頃、ホワイトを陰で虐めていた。
主犯ではなかったが、皆と一緒になって無視したり画鋲を仕掛けたりはしていた。
その後ホワイトへの虐めは学校側にバレてしまったが、主犯の一人とその他の友人二人が虐めていたということになり。ブラックがやってきた罪は気付かれないまま事件は幕を閉じることとなった。
「知っている奴と言えば、主犯とその他二人。そして……ホワイト本人」
だがホワイトは、スマホすら持っていない機械音痴。
それに今更ホワイトが、そんな昔の事を、しかもこんな唐突に世間にバラすとも思えなかった。
「クソッ。一体なんだこの胸のざわつきは」
ざわざわする胸の気持ち悪さに少し吐き気を覚えたブラックは、一度新鮮な空気を吸おうとカーテンを開けて窓に手をかけたが、その時見えた外の光景に手が止まった。
「あれは」
外に居たのは、どんな高層ビルよりも遥かに高くて大きな人型の怪人。
「あの怪人……随分人に近い見た目しているな」
巨人ということ以外はほとんど人間の女性に近い見た目をしてる怪人は、何故かいつものように暴れまわることなく。その場で真っ黒な長い髪を前に垂らして、静かに体操座りをしていた。
その姿はまるで、誰かを待っているようにも見える。
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