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◇◇◇
デートの終わり。ゴトゴトゆれる電車で中根さんと里織さんが話してるのを眺めていた。何故か中根さんと里織さん、俺氏と坂やんが電車のシートに向かい合って座っている。中根さんと里織さんは仲良さそう。
最近ますます日が落ちるのが遅くなって、電車の窓の女子のいる方は半分オレンジ色で俺らがいる方は半分藍色になっていた。そんな夕日をぼんやり見つめながら今日を思い返す。今日も正直たいして楽しくなかった。デートなのに里織さんとほとんど話してないし。
でもなんかデートの雰囲気はちょっとわかったかもで、里織さんは俺の身の回りに希少な身近な女子になっているわけで、俺に他に出会いはない。ってことはここで告って彼女にしないと駄目じゃないかと思ってきた。
1日彼女OKならずっと彼女もOKなんではなかろうか。俺氏、甘い?
そんで駅についてバイバイしようかって時に里織さんにちょっとお礼したいって言ってご飯に誘った。定番のnumber19っていうお洒落カフェ。里織さんはいいよって気軽に言ってくれたから、ひょっとしたら脈があるのかも。ホワイトデー用に結局買ったチェーンのブレスレットも渡そうかなと思ったし。初彼女に初プレゼント? どきどき。
ちょい高のハンバーガーで財布にダメージを負いつつどうやって切り出したものか考えてるとじりじりと時間がすぎる。マンボウとかかわいかったような気もするけどええとそんな話題じゃなくて。すっかり食べ終わってじゃあまたね的な空気が流れたのでめっちゃバクバクする心臓で口を開く。やべ、こんな緊張初めてかも。
「あの、里織さんにお話が」
「ん? 何々?」
「えと、その、付き合ってくれませんか?」
「他の日もあるの?」
「そうじゃなくて、その、彼女として?」
急にキョトンとする里織さんの表情に嫌な予感を覚える。
「あれ? 聞いてなかった?」
「何を?」
「私高校から東京に行くんだよ。だから今日1日限りなの」
「まじで?」
「うん、ごめんね。でも楽しかった。ありがとう利彦さん」
撃沈した。俺氏と里織さんの間にもともと彼女になる要素がなかったのだ。
でもなんか、嘘をつくのは終わったから、ほっとしたような残念な気持ち。よく考えたら、里織さんのこと好きなわけでもなかったのかも。好きだから付き合うんだよね。彼女ってよくわからない。
ブレスレットは妹に取られた。
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