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サーシャ、アベル、レイ、アナの 四人は幼い頃から悲劇を見すぎている。 特にサーシャは。 そして、自分の命の大切さを知らない。 最初に会った時、アベルとレイとアナは隣の部屋で寝ていた。 でも、サーシャだけが血まみれのユウリを見ていた。 サーシャの瞳は光を拒否しながら、 人間だった物を見つめて 死んだように生きているようだった。 一緒に暮らすようになってから アベル、レイ、アナはすぐに懐いてくれた。 でも、サーシャは笑うことも話すこともなかった。 屋上で静かに絵を描いていた。 あの日の光景をずっと。 サーシャが今の性格になったのは12歳の頃に行ったピクニックでの事である。 ご飯を食べてからサーシャ以外の三人がイロトリドリの花を持ってきた。 「「「サーシャ、花の冠作って!」」」 サーシャは微笑んで読んでいた本に栞を挟んだ。 細い白い指で器用に編み込んでいくのを食い入るように見ていた。 「サーシャはどんな花が好き?」 アベルが言った。 「ない。ないけど、四歳の時のマスターが 僕は月下花だって言ってた。」 サーシャは自分の事を僕って呼ぶのか。 「サーシャは男の子なのかな?」 「さぁ」 サーシャは気に入らなかったようで顔をしかめた。 「ねぇ、そのお花は買えるの?」 アベルは一個前の話題について聞きたかったらしい。 「夜しか咲かないんだって。リンが言ってた。」 そう言ってサーシャは花の冠を3つ、アベル達に渡した。 「リーシャ、ありがとう。」 そう言って私の頭に花の冠を被せたサーシャを抱きしめた。
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