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06
すうっと伸びた腕は後ろ手に組まれ、すらっと伸びた足は強烈に彼女を十等身たらしめている。
そしてTシャツの襟元と袖口から、まだ日に灼けていない真っ白な肌が境界線を超えて覗かせる。
いかんいかんと思いながら俺の目はその境目を追ってしまう。
なんて真っ白な肌なんだ。
箸より重い物を持ったことの無いような華奢な指先には少しだけ伸ばしている桜色の爪が乗っている。
おそらく中学生でも許されるコートを塗っているんだ。
二枚の前歯は大きく真っ白で、上下からピンク色の小さい唇がフワッと包んでいる。
目は相変わらずウルウル、キラキラして俺を好奇の眼差しで見つめている。
それは完全な塊になって、俺の脳髄に鉄杭を打ち込んだ。
「ねえ~、なんで私にだけ『頑張ったな』って言ったの?」
「え?」
ドキッとした。
「ねえ~、なんで?」
「なんでって、それは、、、」
「んも~、早く~っ」
「だって、、、が、頑張ったじゃないか」
「・・・ホント???」
玉城彩子は、それを聞いて、両手でいきなり俺の手首を握った。
これはいくらなんでも想定外だ。やめろ、お願いだからやめてくれ。
「おいおい、なんだ、どうした」
「じゃ、また満点取ったら、褒めてくれる?」
そう言って、今度は俺の手首を大きく振り回し始めた。
いつもの俺なら、
「うるせー、一回満点取った風情で調子に乗るんじゃねぇ、手ぇ~離せ、バーカ」
と、ピシャリと手厳しく言ってのけ、そそくさと次の授業準備に入るところなのだが、
「うん、わかった」
と言ってしまった。。。
なんだ、俺。真剣な顔で返事しちまった。中二の子に魔法をかけられてるぞ。
大丈夫か、俺。
結局、春期講習の間、ずうっと彼女は小テストで満点を取り続け、そのご褒美として、ずうっと俺は総括の中で『頑張ったな』と声をかけ続けることになってしまった。
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