alive

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バスの座席に座りながら、ボーッと天井を見つめていた。 私は死んでしまったのだろうか。 だから今、この不思議なバスに乗っているのだろうか。最後に家族に会いたかったな。 バスの揺れが心地良くて眠りに身を任そうと思っていた時、またバスが何処かに停車した。 窓の外を覗くと、見た事ある公園だった。 私は急いでバスから降りた。 鼓動がドクンドクンと脈打つ。 この公園は、彼とよく来ていた場所だった。 春になると美しい桜が咲き誇る。夏になると2人で花火をしたり、秋には黄金色の枯葉を踏みながら手を繋いで散歩して。 大好きな横顔をずっと眺めていた。 ぼやっと灯る街灯の下、ベンチに誰かの影が見えた。別れた彼だった。 私はびっくりして、後ろの木陰に隠れた。 〝芽生は元気だろうか〟 彼の心の声が聞こえてくる。耳に語りかけてくるみたいに響く。 〝あいつは悩んでいる様だったのに、俺が気付いてあげられなかった。俺が守るって言えば良かったのに、そんな勇気すらなかった〟 そんな事思っていたの? 私は会社での事を彼には言わなかった。心配をかけたくなかったから。 〝芽生を守っていく自信がなくて、別れを告げた事を死ぬほど後悔していた。今でもあいつが好きなのに〟 涙が頬を伝っていく。 私も今でも一輝が好きだよ。悩みを言わなくてごめんなさい。 「まだ、間に合うかな。芽生に会いたい」 彼は立ち上がり、公園の出口に向かって駆け出して行った。 私は何で死のうとしたの?彼は私が自殺した姿を見たらどう思うだろう。冷えきった体を見てどう思うだろう。胸が痛い、キュッと締め付けられる。 私は泣きながらバス停へ向かい、バスに足を踏み入れた。 バスは走り出す。 頭の中に後悔の波が押し寄せていた。 生きたい、そう思う。 生きて家族に会いたい。 生きて一輝に会いに行きたい。 間に合うだろうか。 「運転手さん!私、生きたいんです!もう死んでるかもしれないけど、生きたいんです!」 「そうですか、良かった。そう思う事が出来て。さぁ、終着駅に着きますよ。人生のターミナルへ」 「終着駅?人生のターミナル?」 「そこにきっと、あなたの会いたい人がいるはずです」 バスは人生のターミナルに向かって、再び走り出した。
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