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「さぁ、人生のターミナルに着きました。ありがとうございました。もう二度と乗車しないで下さいね」
バスが終着駅へ止まる。運転手さんはこちらを見て優しく微笑んだ。
「ありがとう!」
私は勢いよく地上へ、右足を踏み出した。
「芽生!」
その声がする方へ顔を上げると、また胸が熱くなって涙が溢れた。
「お父さん!お母さん!亮!」
そこには大好きな家族が居た。お母さんが私を抱き締める。
「芽生、死なないで!私たちはあなたを愛してる。あなたが居ないだめなのよ。だから、戻って来てちょうだい!」
「お、お母さん!ごめんなさい!勝手に家出して……」
「いいの、いいのよ。私たちは待ってるから、戻ってきて欲しい」
「うん」
私は、お母さんを強く抱き締めた。家族と一緒にまた暮らしたい。一緒に生きていきたい。
しばらくすると、背後から一輝の声が届いて来た。
「芽生……死なないで」
「一輝……」
私は彼の方を振り返る。
「ごめん。今度こそお前を守りたい。だから、戻ってきて欲しい。そして、俺とまた付き合って欲しい。好きだよ」
「うん、ありがとう。一輝、好きだよ」
私たちは抱き締め合った。久しぶりのぬくもりは優しくて、大好きな匂いがした。一輝と一緒に生きていきたい。この先もずっと。
私は生きたい、と強く思う。
大好きな人たちと一緒に生きたい。
そう思った時、停車バスの黄色いライトが私を包み込んだ。すると、ふわっと体が浮いていく感覚がした。
***
「……芽生?」
「……芽生?」
ん?
私は四角いベッドの上で目を覚ました。
病院のベッドのようだ。
目の前には大好きな人たちの笑顔がある。
「おかえり」
「ただいま」
私には帰る場所がある。
人は1人では生きていけない。
大好きな人たちが側に居て、支えてくれる。
辛い、苦しい事があっても愛する人たち、愛してくれる人たちがいれば大丈夫だ。
私も、あなたも、必要とされているんだよ。
だから、私は
これからもずっと……
生き続ける。
人生を決して諦めない。
end
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