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三
緊急逮捕されて以降、毎日朝から夜まで取り調べを受けることになった。
赤銅の取り調べを担当しているのは、牟田という四〇代の刑事部組織犯罪対策課の警部だった。
事件があった日に、朝から晩まで何をしていたか言わされる。
朝起きて、何を食べたか。コンビニに寄ったか。組織の事務所に行ったのは何時か。殺人現場に行ったのは何時か。どこで待機していたか。拳銃の引き金を引いたのは、右手か左手か。撃った後は、どこに行ったか。何時に帰宅したか。
そんなことを、何回も繰り返し聞かれた。赤銅はそれに嘘で答える。
拳銃は五年ほど前に大阪に行ったとき、見ず知らずの外国人から買ったと言った。
赤銅はあくまでも、個人の意志として島田組の幹部を暗殺した、と言い張らなければならない。
牟田警部は、
「誰に命じられて殺ったか、吐け!」と五分に一度くらいの割合で怒鳴るように言う。
県警としては、それを突破口として幹部を殺人教唆で逮捕しようというつもりなのだろう。
赤銅は、
「誰にも命じられておりません。自発的に殺りました」と何度でも答えた。
調書を取られ、拇印で捺印する。
牟田警部はそれを見て、
「いちおう確認するが、お前、替え玉じゃないよな?」と言った。
「違います」
赤銅はそう即答した。
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