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「真相は暗闇の中にあります」
名探偵が声高に言った。
周囲の人々がざわついた。
ここはとある古びた洋館。
外は嵐で吹き荒れ、さながら、「嵐の山荘」だった。
そして、まるでお決まりのように、ここの主人である男が何者かに殺されたのだ。
そして、またしてもお決まりのように、ここに名探偵がなぜか泊まっていた。
今は広間で、その名探偵が関係者を集めて、よく見る推理披露ショーが行われている。
ただ、違っているのは、まだ、死体が発見されてから、1時間ほどしかたっていないことだろう。
「もう、犯人がわかったの!?」
ここの主人の奥さんが、驚きの声を上げる。
この奥さんは、主人の浮気やら自分の無駄使いやら、いくつも動機がある。
「いや、母さん、真相は暗闇の中って、迷宮入りのことだよ」
主人の息子が母親を諭す。
この息子も借金やら婚姻を反対されたやらで動機がたくさんある。
他にも、動機がある人間がたくさん集まっていた。
基本的に、推理物の動機はお金関係か愛憎のもつれがほとんどなので、ここにいる人たちの動機もそれである。
というか、なんでそんな人間ばっかり集めたのかが一番の謎である。
名探偵は得意そうに鼻を鳴らした。
「いえ、違います。暗闇が犯人を教えてくれるのです」
そういって名探偵は人々を見渡した。
「ここの主人は亡くなる時に、缶に入っていた液体で濡れていました。
そして、手の状態から犯人に触れていることがわかりました」
どうやってわかったのか、聞かないでください。
「そしてその液体は付くと水や石鹸では落ちません」
若干一名の顔色が青くなる。
この人が犯人だろうか?
「だが、あの液体は透明だったぞ。
付いてもわからんだろうが」
客の一人が言ったが、それを名探偵は笑顔で向かえた。
「そうです!だから暗闇が教えてくれるんです!」
そして指を鳴らすと、電気が消えた。
なぜ消えたか、追及しないでください。
外は月明かりのない夜。
広間は闇に閉ざされる。
だが、その中の一人、なぜか頬が青白く発光していた。
「ここの主人の手に付いていたのは蓄光塗料だったのです!
つまり、あなたが犯人です!」
犯人は崩れ落ちた。
なんでここの主人が蓄光塗料を用意していたのか聞かないでください。
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