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「あの...名前なんて言うんですか?」 「あー...秘密♡。まぁ君の方が年下っぽいしお兄さんって呼んでよ!」 「えー...じゃあ...お兄さん?」 よくわからない自分とは対象的なテンションに戸惑いながらも進み始める。 そしてふと思ったことをお兄さんに聞くと自分の異様な姿に気がついた。 「そういや全く目が暗闇に馴れないんですよね...お兄さんはどのくらいで馴れたんですか?」 「いや...君、目がすっごくグロい状態で潰れてるじゃん...痛くないの?なれるもなにもここは元々明るいよ?」 「....え?」 立ち止まって目を触る。 するととても気持ちの悪い感触が手に伝わってきた。 どうして気が付かなかったのだろうか。 恐らく右目は刃物かなにかで刺されたのだろう、そして左目は固まっている。 「右目は無理だけど...左目はまだ見える可能性があるからそっとしておこう?」 自分だけが暗闇の中にいることを自覚し急に体中を恐怖が覆い尽くす。 一歩足を動かすことすら怖くてできない。 「大丈夫?」 心配してくれたのか優しく私の手をとり優しく包んでくれる。 その仕草に安心感と懐かしみを覚えたその時、突然の頭痛が私を襲った。 頭を抱えて座り込みひたすら痛みに耐える。 その間脳裏に浮かんだのは、自分が茶髪の背の高い男性に目を包丁で刺されている場面。 少し思い出した、私は取っ組み合いになって相手に目を刺されそのまま階段から落ちたのだ。 「...進もうか」 私が落ち着いたのを見計らって手をとり歩き始めるお兄さん。 というかもう死んでいるのだから怖いもなにもないじゃないか。 お兄さんとはまだ会って間もないのに体を委ねて進んで行けるほど安心できる。 生きているときは知り合いだったのかもしれないな。 そんなことを思いながらまた歩き始めた。
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