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「何か思い出した?」 「えぇ..まぁ...少しだけ..」 「そっか、あっ!“入り口”に着いたよ」 お兄さん曰く入り口は天国と地獄で別れていて、地獄は闇、天国は光に包まれた入り口らしい。 地獄行きと決まっている人は天国の入り口に入ろうとすると弾かれるが天国行きの許可が出ている人は地獄行きにも行けるそう。 さっき思い出した記憶が正しければ恐らく自分は被害者、天国行きだろう。 「じゃ、失礼」 「えっ...何を..」 お兄さんの手が顔に近づいてくるのがわかる。 恐怖を感じ後ろへ一歩下がろうとすると急に固まっている左目を強引に開かせられる。 「い"っ..あ"あ"あ"あ"あ"」 ひっついていた目が無理やり開いたのでとても痛い。 それと同時に暗闇の中に光が一気に差し込み視界が光になれずに腕で光を遮る。 だんだん光に馴れていったので腕を退ける。 すると視界に入ってきたのは.... 「お前...ッッ!!」 「あぁ、やっと思い出した?」 すました顔で嘲笑っているかのような背の高い茶髪の男。 全て思い出した、こいつが...私を騙して... 「どうせ巻き込んで地獄に引きずり込むならさ?記憶戻ってからのほうがいいだろ?」 最初にここで会ったときに「お前ッ..!なんでッッ...」と言っていたのは恐らくここに来てまで私に会うことになったことに関して気分を害したのだろう。 「俺は地獄行き、お前は天国行き。だったらお前を巻き込んで“一緒に”地獄に行くしか無いよなぁ?」 兄の紹介で出会った彼と交際を始めて数ヶ月経った頃、彼が結婚詐欺師で人殺しまでをしていることに気がついた。 最初は信じられなかったが問い詰めて言い合いになった時に直ぐに鞄出てきたナイフで(あぁ...こいつは人を殺してるんだ。そして自分も殺す気だったんだ)と理解した。 そのまま目を刺され真夜中の歩道橋を二人一緒に落ちていった。 「打ちどころが悪かった俺はその後死んだ、お前は右目は再起不能だがまだ生きれる状態だ。でも俺を殺しといてここでのうのうと生きてもらうわけにはいかない」 「殺した?勝手にお前が私を巻き込んで落ちてっただけだろう?」 まだ体は生きられる状態ならここで負けるわけにはいかない。 しかしこいつは私の腕を掴み地獄への入り口へ引っ張っていく。 必死に抵抗するが男性相手に力で勝てるわけない。 完全に引きずり込まれそうになったその時、 『負けるなッッ!!』 そんな声が何処からか聞こえてきたと同時に空色の入り口のようなものが現れそこに引き込まれていく。 「クソッッ!!なんで最後の最後で..ッッッ!!!!呪ってやる...ッッ!!!」 最後に見えたのはあいつの絶望した顔だった。
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