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肆
「ん....」
「....!!起きた!!」
「ナースコール押して!!」
病室で友人や兄に囲まれているところで目が覚める。
よくわからないが多分頭と右目は包帯で巻かれて足も骨折しているのだろうか、固定されている。
ほっとしたような表情の兄、ナースコールを押している友人や今にも泣き出しそうな友人。
どのくらい眠っていたのだろうか。
先程までの出来事は夢だったのかもしれない。
「ごめんなぁ兄ちゃんがあいつの素性を見抜けなかったばかりにこんな目に会わせてしまって...ほんとごめんなぁ...生きてて良かった..」
何度もごめんと謝る兄。
「ねぇ...誰か..寝てる間に私の腕...強く掴んだ?」
夢の中であいつに捕まれたところに丁度先程まで掴まれていたような感覚が残っている。
誰かが掴んでいたのを夢の中で錯覚したのだろうか。
しかし誰も掴んでいないらしい。
「眠っている間にね、あいつと会ったんだ。で、地獄に一緒に引きずり込まれそうになったんだけどあと少しってところでお兄ちゃんの声が聞こえて気がついたら目が覚めたんだ...助けてくれてありがとう、お兄ちゃん」
「あいつ...図々しいな...w、どういたしまして」
後日、無事退院できたが刺された右目の傷は完全には治らなかった。
なので少し前髪を伸ばして多少カモフラージュしながら生活している。
あいつは落ちたときの打ち所が悪く死んだらしい。
憎い相手が死んでも少しは涙が出てくるものなんだなぁと実感した。
ただひとつ、最後にあいつが言った言葉「呪ってやる」、それがどうも怖くてたまに思いだす。
後々気がついたのだが夢の中であいつに掴まれたところはよくよく見るとうっすら手形が残っており、それが一生消えることはなかった。
終
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