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「俺、わかってるよ。兄貴が本気で抵抗したら俺なんて一瞬で力でねじ伏せられるんだ。わかっててしないから、期待する」
紫の瞳が真っ直ぐと朱華を射抜く。普段はおっとりと眉尻を下げているが、意識してそうしなければつり目がちな朱華とよく似た精悍な顔つきだ。
「兄貴は俺のこと許してくれる。どこまで許してくれるのか、知りたい」
「俺の忍耐を試すつもりか?」
「先に俺の理性を試したのはそっちだろ。もっとちゃんと抵抗すればよかったんだ。望みなんて持てないくらい、絶縁する勢いで」
「けどな……縁切ったらお前、死にそうだもんな」
「そうかな。そうかも。……遺書に実の兄貴に振られて絶望しましたって書いて死ぬね」
最低の脅し文句でも朱華は低く笑う。多分、止めたところで意味がないからだ。黙ってされるよりずっといい。
紫は朱華のこういうところが好きなのだ。表面上は何事もまるで自分に関係ないかのように受け流すが、ちゃんと心は理解している。理解して、それを力づくでやめさせようとしない。阻止はせずそのときが来たらその寛容な心で受け入れるのだろう。そういうところが大好きで、苦しくて嫌になる。期待してしまう。
「意見のすり合わせってのは大事だよな」
「グレーゾーンを探すってこと? 例えば……兄貴の中に入れなくても、触り合いならOKとか」
「手を出すより先に言葉にしただけ評価してやる。尻まで貸す気はないからな」
きょとんと丸くなった瞳が朱華を見つめる。昔と変わらない弟の無垢な表情を見つめると心が和らいだ。最近少しだけ違う男に見えてしまうことが増えたが、やっぱりこいつは変わらないなと思いながらベッドサイドに置いていたティッシュボックスに手を伸ばした。
「俺には触るな。お前の息をするように滑らかな正座を買って、出すだけなら協力してやる」
「……?、ッ……!?」
「どうした、出したいんじゃなかったのか」
「ッ、します!お願いします!!」
「尻は貸さん、触ったら最後玉と竿を順に握り潰すからそのつもりでいろ。揉むな」
「ありがとうございます!ありがとうございます!!」
飛びついた紫の指がねっとりと臀部を揉み込み、それを叩き落とす。
「あ、あの兄貴、もう一つお願いが……」
「なんだお前厚かましいな」
「25年も同じ家で生きてて今更だよ。あのね、俺、太もも貸してほしい!」
「今から右のほうを潰します」
「待ってくださいお願い話を聞いてやめアアアーーーッ!」
夜中に出していい声量ではない悲鳴が寝室に木霊し、少しの間荒い息だけが部屋に響いた。
四つん這いになるように倒れ伏した紫がガクガクと下半身を震わせる。にち……とした湿り気を手のひらに感じながら、朱華は眉間にしわを寄せて紫を見下ろしていた。この不快感は手に人の体液が付着したことか、弟そのものへの嫌悪感によるものか考えながら。
「あひっ、はっ、はーっ、あにひの、あにひの太ももですまたさせてくだはいぃい……」
「もう出したんだからいいだろこの会話……」
「だめ、やだ……ごほんっ……んん、あのね兄貴、手コキじゃなくて素股なのは何も俺だけの為じゃないんだよ」
「続ける気か? 世界一不毛だぞこの会話」
「手コキしてくれたらそりゃ嬉しいんだけど、兄貴がオナるとき自分の扱きながら俺のちんこの感触思い出す羽目になるのかなって思うと……興奮するけど……か、可哀想かなぁって!」
「心底嬉しそうな声でノーハンドで勃たせた上扱くな。…………まあ、確かにそれは嫌だな」
「!! それに手のほうが感触リアルだし! 太ももに何か擦り付ける経験なんてなかなか無いよ! 下手すりゃ一生思い出さないって!」
「できれば一生したくない体験だけどな」
太ももに擦り寄る弟を見ながら、結局紫の言う「塩でも甘い」評価は覆せないなとため息を吐いた。今日だけで何度ため息が出たかわからない。
鼻息を荒くしてにじり寄る紫がスウェットのゴムに手を掛けると、観念したように身を捻って背中を向けた。下着ごとずり下ろされてつんと上を向いた臀部と引き締まった太ももが露わになる。
「ふっ、あう、うう……っ、兄貴の太もも……ふわふわ……っ」
「人を肥満体型みたいに言うな、体脂肪率1桁の身体だぞ、ッ」
にゅるにゅるとした感触が太ももの皮膚を撫でた。一度達して濡れた男性器の先端が押し当てられている。
身体が強張り、きゅっと太ももに力が込められる。背後から「ひぐゥっ」と情けない声が上がった。
「締りが良くて気持ちいいです!!」
「肉親ながら本気で気持ち悪いな……」
少し視線を下にずらすと、太ももの間から濡れそぼった鬼頭が頭を出しては引っ込んでを繰り返している。とろとろと先走りが溢れて、太ももを伝った先の膝裏を濡らした。
「ッ、おいどこ触って……!」
「兄貴のおっぱいは筋肉だから力入れてないとき柔らかいね」
「そろそろ本気で怒るぞ」
「でも許してくれるでしょ?」
「…………」
「兄貴大好き!」
ぎゅう、と身体に回された腕に力が込められる。宝物を閉じ込めるように、逃さないように。
ぱんぱんと皮膚同士のぶつかる音を聞きながら、早く終わらないかなとあくびを噛み殺した。
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