ガリザニ族の興亡 〜地球の支配者ガリザニ族の運命は?〜

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今日も食事の時間がやってきた。 食卓についたガリザニは、勢いよく食べる。 ガリッガリッと頭や骨や外殻を噛み切る音、ザニッザニッと肉と一緒に噛み砕く音が食堂に鳴り響く。 ガリッガリッ、ザニッザニッ、ガリッガリッ、ザニッザニッ、ガリッガリッ、ザニッザニッ、ガリッガリッ、ザニッザニッ、ガリッガリッ、ザニッザニッ、ガリッガリッ、ザニッザニッ、… ガリザニたちの食欲は旺盛だ。食料が少なくなれば共食いをしそうな勢いである。 ガリザニはアメリカザリガニの子孫。現在、地球の捕食者の頂点に立つ王者の種だ。 その王者ガリザニの中の王の食卓でのことだ。 ザリッザリッ、ガニッガニッ、ザリッザリッ、ガニッガニッ、ザリッザリッ、ガニッガニッ、ザリッザリッ、ガニッガニッ、… 王の目がキラッと光った。どれほどいるのかわからない我が子のうちの一匹を見据えて、ガリザニ語で叱った。 「違う違う。そんな音ではガリザニ族を支配できないぞ。こうするんだ」いうが早いか、王者のガリザニは正体不明の生物を喰らい始めた。 ガリッガリッ、ザニッザニッ、ガリッガリッ、ザニッザニッ、ガリッガリッ、ザニッザニッ、ガリッガリッ、ザニッザニッ、ガリッガリッ、ザニッザニッ、ガリッガリッ、ザニッザニッ、… 子供は真似をしようとする。しかし王者のような音は出ない。 ザリッザリッ、ガニッガニッ、ザリッザリッ、ガニッガニッ、ザリッザリッ、ガニッガニッ、ザリッザリッ、ガニッガニッ、… 「お前はそんな音しか出せないのか。わしの息子にはふさわしくない。追放だ!」 こうして息子はガリザニ一族から追放された。 それでも子供は生き延びた。 ザリッザリッ、ガニッガニッ、ザリッザリッ、ガニッガニッ、ザリッザリッ、ガニッガニッ、ザリッザリッ、ガニッガニッ、… 音は変わらなかった。しかし、同じ音を立てる仲間がいることがわかった。彼らはガリザニ族に見つからないように暮らしていたが、その実数はかなり多いようだった。かれらは自分たちをザリガニ族と名乗った。 そして次第にザリガニ族の仲間たちは増えていった。 彼らザリガニ族の繁殖力は強く、数年後には、ガリザニ族の軍隊と戦えるまでの勢力になった。 そしてその日がきた。 武装蜂起したザリガニ族はガリザニ族を圧倒する強さだった。ガリザニ族は抵抗むなしく滅んだ。そして跡形もなく食い尽くされた。 こうしてザリガニ族は、地球の生命の頂点を奪い取ったのだった。 一方、被捕食者たちの生活はというと、ほとんど変わらなかった。頂点直下の者は多少多めに食われたけれど、下に行くほど変化は小さかった。 地球は人類滅亡後も、何事もなく太陽の周りを回っていた。
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