12人が本棚に入れています
本棚に追加
「ひゃーっ!」
情けない悲鳴をあげて、真っ先に逃げ出したのは、シンを捕まえていたはずの男である。
男につられて、集まっていたメンバーも三々五々に逃げ出していった。
遠くに、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
「パパッ!」
ツボミがシンに向かって駆け出していく。
シンは、いや、鴻上信芳は両手を広げてツボミを抱きとめようとする。
感動的な親子の再会。
思いきや、
「何やってんだよ。このクソマヌケがー!」
ツボミはシンをぶん殴った。
握った拳が見事にクリーンヒットして、信芳はマンガみたいに茂みの中に吹っ飛んでいく。
そして倒れた信芳を追って続いて飛び込んだツボミは、
「心配させんな。このバカオヤジが」
そのままポカポカとシンの胸を殴り続ける。
「……あらまぁ」
優子が呆れた声をあげ、
「ツボミ、それ以上やるとパパさん、本当に怪我しちゃうから」
見かねた沙羅がふたりの間に割って入った。
そんな光景を眺めながら、山田は、
「なぁオレら、今のうちに退散しろってことだろうな」
「まぁそうだろうね。これ以上ここにいたら、シンさんに怒られそうだ」
小林が小さく息をつき、
「で俺ら、何のために呼ばれたんだ?」
田中は大きく肩をすくめた。
なんにせよ、今はさっさと退散を決め込むのが正解だろう。
――了――
最初のコメントを投稿しよう!