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「チッ……」
山田は思わず舌打ちした。
ツボミさえ来なければ、今ごろとうに決着がついていたはずだ。
でもその舌打ちを聞いて、ツボミは山田の首に掴みかかる。
「パパを助けてくれるよな。パパを見捨てたりしないよな!」
山田の舌打ちを、ポカをした信芳に向けられたものだと取ったのだ。
山田は、
「そんなことしねーって」
ツボミの手を振り払う。
邪険にされて、ツボミは真っ青になった。
「だから違ぇって」
山田は慌てて言い訳をする。
あんまりツボミとくっついていると、シンが怖いから振り払っただけで、他意はない。
「シンさ――、鴻上のパパは大丈夫だよ」
「ホントかっ」
ツボミの顔は真剣だ。
いつも反抗期まっただ中を隠そうともしないのに、こんな可愛らしい一面があったなんて、ちょっと意外。
そしてようやく、シンがおとなしく捕まっている訳を理解した。
そぉーっとシンを伺い見ると、やはり重く垂れ下がった前髪の下で、口元を緩くほころばせている。
完全に、喜んでいる。
山田は小さくため息をつき、
「……パパは、必ず助けるからさ。ちょっと3秒だけ、目をつぶっててくんない」
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