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キャンプ
「ありえねー、ありえねー、ありえねーったらありえねー!」
力任せにテントのペグを撃ちこみながら、鴻上ツボミが怒鳴っている。
「ゼッテーありえねーよ。なんで高校生にもなって保護者同伴なんだよ!」
春休みを利用して計画したキャンプに、ツボミの父親の鴻上信芳がついて来てしまった。
「だって危ないじゃないか、女の子だけでひと晩泊まるだなんてさ」
信芳はさも心配だと眉をしかめるが、
「危なくなんかねーよ。別にジャングルで寝るわけじゃねーんだぜ」
キャンプ場は、売店もあるしシャワールームも完備しているしで、至れり尽くせりの場所だ。
24時間、管理棟には管理人が詰めているし、何か困ったことがあれば、そこを頼ればいい。
素人キャンパーたちには、ひどく都合良く出来ている。
正直、人工の明かりが周りに無いだけで、ホテルで過ごすのとあまり変わらないくらいだ。
しかし信芳は、
「でも、サルがいるかもだし、クマが出るかもだし」
「んなもん、いても出てきやしねーよ!」
一応、自然の中だからケモノぐらいいるだろうが、これだけキャンパーがたくさんいる流行りのキャンプ場で、ケモノたちがのこのこと姿を現すとは思えない。
ツボミは信芳に、
「くだらねーことばっか言ってねーで、テント建てるのぐらい手伝えよ」
イライラした感情のまま、厳しく怒鳴りつける。
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