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モニターに映し出されたのは、目の青い男性だった。カメラに向かって微笑んで、手を振る。
『はい!サチ。調子はどう?』
「はーい、ロバート!相変わらずよ。って言っても、聞こえるわけないか、フフッ」
『君の提案したプロジェクト、なんとか通りそうだよ。図らずも君の言ったとおりになった。倫理委員会が折れたんだ。この食糧難のご時世だからね。農労省からもかなり圧力かけられたみたい。そして、その……えっと、なんて言うんだっけ?日本語で。オカチ?オハチ?まあいいや。そのオハチが僕のとこに回ってきたってわけなんだけどもね。サチ!まったくもって君は、余計な置き土産を置いていくんだもの。おかげでこっちはハードスケジュールでてんやわんやだ!ヒーッ』
サチは声に出して笑う。
『──と、いっても。今ごろ君は、眠り姫なんだろうな』
ころころと変わる表情のロバートが、急に寂しそうに言う。
『君が恋しいよ』
「ああ。ロバート。私も」
薬指の指輪を撫でながら、サチもつぶやいた。
『必ず後で、迎えに行く。もうちょいの辛抱だ。数億年なんて一眠りだからね。愛してる。サチ』
「ありがとう。ロバート」
サチは唇に手を当てて、モニターのロバートにキスを投げる。
『で。だ。君に喜んで貰おうと思って、試作のデータを送っておいた。たぶんケビンが上手く淹れてくれると思う。起床したら、試してみてくれ。ああ。もう時間だ、すまない行かなくちゃ。じゃあ。また』
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