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たくさんの銀河系を取り込んで、円盤状に渦を巻いている。中心の恒星は、直視できないほどまぶしく、ハッブルの天体写真では、淡い霞模様でしか捉えられなかった星団も、いまや肉眼で、一つ一つ星の色や形を確認できる。
まるで最大級の花火が開き、倒れ込んでくるようだ。
「こんなに近づくまで寝ていたなんて、信じられない。ケビン。私たちはどれくらい、コールドスリープしてたの?」
『サチがコールドスリープに入って、40億5376年と61日経っています』
「そんなに!」
『はい』
そして今にもその大銀河に重なりそうな、もう一つの銀河が見える。下方からずっと続き、輝く大河のように流れる天の川。あそこには故郷の星、地球がある。時間と共に太陽が膨張し、高温にさらされた地球はもう、住めない星になっているはずだ。太陽の寿命も残り数億年だろう。スリープ前に比べ、星座の位置もだいぶ変わってきている。
サチにはもう、今の太陽系がどうなっているのか見当もつかない。
アンドロメダ同様、吸い込まれそうな荘厳さに圧倒され、息をするのも忘れてしまう。
「これ凄い、天の川が」
『観測から、二つの銀河はおよそ6億年ほどで重なるでしょう。そしてサチ、私はプログラム規定に従い、コールドスリープを解除しました』
「次の地球が見つかったの?」
『いえ。そうではありません』
「そう。やっぱり。なにかあったのね」
『はい。残念です』
サチの太ももになにかが巻きついてくる。毛に覆われた腕の感触に、サチは悲鳴をあげた。
「きゃ!ケ、ケビン。明かりつけて」
「キ、」
照明が戻り、見ると先程まで寝ていた猿が、サチの太ももに抱きついていた。
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