5人が本棚に入れています
本棚に追加
サチは、モニターのある座席へ無重力の中、ジュディを抱えながら壁を蹴る。備え付けのベルトを掴み、ジュディの手を引き寄せて座らせる。彼女は器用にシートベルトを受け取り、体を固定する。
「一体なにを!判断すればいいの?ケビン!」
反応が無い。
モニター脇のキーボードを操作すると、ようやくシステムがリロードした。
『おはようございます。サチ。よく眠れましたか?』
「ええ。お陰様で!いまの損害状況を調べて!大至急!」
『承知しました。ロバートからメッセージが届いています。再生しますか?』
「それはもう見た!バックアップのケビン!いま大事なのはコロニーがもつのかどうかよ!」
『失礼しました。連結ISS。セントリフュージ及びCBEFは不通、太陽光発電ダウン。コロニー、機内温度がメルトダウンを超えるフレアを受けつつ、なお上昇中。コロニーの破棄を推奨します。パージしますか?』
「パージします。急いで。パージ後全速で離脱。ケビン、自動操縦はいけそう?」
『行けます』
「You have」
『I have』
離れてゆくコロニーが崩壊していく。その様子がモニターに映し出される。コロニーの後方に、超新星爆発のオーロラが放射状に手を伸ばしている。爆発で生じた光のスペクトルは広大で、まるで虹色のシャボン玉が破裂する瞬間のように見える。恐ろしくも美しい、神秘的な光景に畏怖の念をサチは覚える。
そして、ジュディの横顔を心配そうに覗き、思う。
モニターに映る星雲を、つぶらな瞳の中に宿し、彼女はいったい何を思うのだろうと。
最初のコメントを投稿しよう!