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葬儀が始まる少し前に斎場に着いてしまい、遠慮がちにうろ覚えの親戚に挨拶をする。
気を効かせた父の姉が、柩の中の父に会わせてくれた。
――やっぱり、歳をとったんだな。
実父との数十年ぶりの再会だというのに、ぼんやりとそんなことが浮かんだだけで、懐かしさも悲しさも、何も湧いてこなかった。
会えば、それなりの感情が私にも溢れてくるのではないかと思っていただけに、あまりの自分の薄情さに戸惑ってしまう。
急に、この葬儀をどのような気持ちで乗り切ればいいのかわからなくなってしまった。
なじみの薄い親戚たちの間で、自分の居場所を見つけられないでいるうちに、葬儀は始まった。
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