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あれは春の夜。
私は小学校入学を控えていた。
温かくて固い父の手が私の手を包み込むようにして引き、雨上がりの道を並んで歩いた。
そうだ、あれは父が好きだった「夜のおさんぽ」だ。
私は満開に咲くふわふわの桜の樹上を、夢中で見上げていた。
「きれいだねぇ」
私は言った。
「うん。でもほら、下も見てごらん」
そう言われて足元を見て、思わず声が出た。
「うわぁ」
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