あなたの記憶

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 雨風で散らされた白い花びらが、アスファルト一面に張り付いている。  それは冷たい月明かりに照らされて、息をのむほど神秘的だった。 「海みたいだね」    父が穏やかに言う。 「海みたいだねぇ」    私も繰り返す。    ゆっくり、二人で白い海を渡る。    今ならわかる。  父はきっと、私の歩幅に合わせてくれていたにちがいない。
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