2人が本棚に入れています
本棚に追加
時間旅行
「タイタニック号見に行きたいんです」
僕がそう言うと、店員はかしこまりました、と書類を差し出した。
丁寧に名前を記入してペンと共に返す。
「いつ頃ご出発のご予定ですか?」
「今すぐにでも」
僕はワクワクする気持ちを抑えながら言った。
案内されるがままに機械に入る。
「お代金は引き落としで頂きます。それでは時間旅行をお楽しみください」
店員が笑顔でスイッチを押す。
僕は目を閉じた。
お客様を見送ると、同僚が声をかけてきた。
「今回はどこ?」
「タイタニックだって」
「やっぱり人気だね」
「映画化もされてるし、まだまだ謎が多い事件だからかな」
「でも私たちは行きたくないよね」
「ね」
生きて帰れる保証はないからね。
「またですよ」
大西洋の海底で調査員が言う。
調査船の鉄のアームが白くコチコチになったiPhoneを拾い上げた。
「最近増えましたね」
「世界各地でも、古い地層から現代の物がたくさん見つかってるらしいよ」
最初のコメントを投稿しよう!