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ある男の手紙
君に初めて手紙を書くね。
まず、感謝を伝えたい。君がいたからこそ、僕はここまで生きてこれた。
楽しそうに生きる君は僕の尊敬と嫉妬の的だったからね。その尊敬と嫉妬こそ、僕の生きる糧だった。
ありがとう。
君と初めて会ったのは、3年前の春。
君はもう覚えてはいないかもしれないね。
大学の入学式で君は僕の前に座った。ふわりといい香りがした。
僕は君の顔を一目見たくてたまらなかったよ。
式が終わって、皆が席を立った時、僕は君に一目惚れしたんだ。
それからは、毎日大学が楽しかった。
君はいつも輝いていて、きっと僕のことなんか眼中に無かったろう。
でも僕はそれでよかった。君が僕の目に写って輝き続けていさえすれば、良かったんだ。
でも、気づけば僕のそんな心は邪悪なものに支配されてしまった。
君があいつと付き合うようになってからだよ。
僕の知らない君をあいつが見ていると思うと、憤りを隠せなかった。
もっと見たい。皆の知らない君を。大衆の前ではさらけ出さない君の姿を。
そう思わずにはいられなかった。
でも、それは無理なんだ。僕と君とでは、住んでる世界が違うから。
でも、違う世界に生きていても、共にあれる場所がある。僕は君をそこへエスコートしようと思うんだ。
僕らの幸せな関係をそこで築こうじゃないか。
喜ばしいことだろ?
今から迎えに行くよ。
君の生涯のファンより
『ピンポーン』
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