ゲームオーバー

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6  さて、これでレポートの罰は無くなった訳だ。俺はホッとして、「ふぅ」と安堵の溜息を吐いた。その様子を見て、九条先生が驚くべき台詞を口にした。 「あぁ、ちなみに。だから、誰かが答えられなくても、特に課題は出さないつもりだったんだよ」  その言葉に俺を含めた学生全員が驚愕する。 「え! そんな!」 「何故、そんな嘘を? 酷すぎますよ!」  口々に筒井や有栖川が喚く。その言葉に九条先生の目は一気に鋭くなる。その迫力に彼等は押し黙るしかなかった。九条先生は口を開いた。 「実は今回、一枚だけ難しいお題を書いたんだ。それがNに当たった『猿』だよ。『猿』の定義は広いからね。苦労すると思った。だが、このゲームで解答する側が配慮すれば難易度は格段に下がっただろう。でも、君達は。言ったよね? 実際に『字を読めない人が生活保護の申請に来た』という話を。  ちなみに、今週末に人気の企業の説明会があることは知っていたよ。だから、君達を試したのさ。君達が『どんな状況であっても人を助けられる人間』かどうかをね。  結果、Nは自力で答えを導いた。筒井、有栖川、黒岩、その他の人達は不親切な対応をし、からかいの言葉を投げかけるだけだった。よく分かったよ。君達がどういう人間なのか……。  今日の講義は以上だ」  九条先生は教室を出て行った。名前を呼ばれた三人は気まずそうに俯いた。  教室には居た堪れない空気が流れ、俺達は九条先生の台詞が耳に残った状態で呆然と立ち尽くしたまま、しばらく動くことが出来なかった。 (完)
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