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2019年6月。会議室には営業部の全員が集まっていた。社長は出張中で不在のため、代わりにみんなして常務の顔色を窺っている。給茶機で温かいお茶を人数分淹れた。カフェインアレルギーの高橋さんの分だけは冷たい水。漆塗り風のお盆の隅に「96年6月購入」とシールが貼られている。備品にはすべてこのシールを貼る決まりなのだ。私は十八個の紙コップを並べて会議室に入った。一人ひとりの前にお茶を置いていく。誰も会釈さえしない。今朝私が人数分の印刷を命じられた資料。それを手に、眉間に皺を寄せながら売上目標未達の説明をする営業部長と、彼を睨みつける常務。この二人の顔の間を、三十二個の目が行ったり来たりしている。最後に高橋さんの前に紙コップを置いたとき、彼だけは申し訳なさそうに頭を下げてくれた。
「このご時世にお茶汲みやらせるなんてサイアクだよねぇ。お客がいるならまだしも、社内の会議だよ? 自分たちでやれっての」
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