地下室

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 連れてこられた先では、手錠だけ外され私はまずベッドらしきところに寝かされる。ふかふかと沈み込むようなやわらかいマットレスの感触が懐かしく気持ちいい。だがまどろんでいる暇もなく、私の上にはすぐに、先ほどの女性とは違う、男のものと思われる荒々しい息づかいと重みがのしかかってくる。顔のマスクのみ残して、私の衣服はすべてはぎ取られる。  はじめて身体を蹂躙されもみくちゃにされた時は、殺されるのかと恐ろしく、身体じゅうが痛くて痛くて、内側からメリメリと裂けていくような感覚に襲われ私はもう死ぬのだ、という絶望感に打ちひしがれた。しかし男の欲求が満たされると泣きじゃくる私を男は急にやさしく抱きしめ、 「かわいい子だね、痛かったの? ごめんね、ごめんね。今度からはもっと優しくしてあげるからね、ごめんね」  男はそう言いながら、さっきまでの荒々しさとはうって変わって、私を胸に引き寄せると震える身体を優しく包み込むように抱きしめた。よかった、殺されてない。私は大丈夫だった。男の胸の広さと温かさに、私は混乱しながらも身を委ね、まだ生きているという事実にとにかく安堵したのだった。  やがて男がベッドを降りてどこかへ行ってしまうのと入れ違いに、私をこの部屋に連れて来た女らしき人がまたやって来て、石鹸のような良い匂いがする湿った布で私の全身をくまなく拭いていった。女の人は一言もしゃべらない。それでもとてもていねいに、まるで人の形をした繊細な彫刻かなにかを磨きあげるかのように、私の身体のすみずみまで、時間をかけてきれいに拭いてくれた。そしてぱりっとして清潔な衣服、それはいつも足首まであるような丈の長いワンピースだった、を着せるとまた後ろ手に手錠をかけ、地下の部屋へと歩かされた。  部屋に戻るとマスクと手錠は外された、しかし女の顔には目の部分をのぞき長いベールがかかっており、暗闇に慣れた私の目でも顔はやはり見えなかった。女の手には来た時と同じくピストルのような物が握られ、私はまた壁に両手をついて立っているよう指示された。そして女が部屋を出ると扉は固そうなロックの音と共に閉ざされ、私は暗闇の中、ひとり取り残されるのだった。
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