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ここには何もない。あるのは自分と暗闇だけ。人と話すどころかテレビや本すらない。そんな中で唯一、外界と接触でき人の温もりを感じられる時間は、階上の部屋で身体じゅうを触られている時だけだった。はじめの内はただひたすらに恐ろしく苦痛でしかなかったそれだが、男が暴力をふるうような事はなく、「かわいい子だね、ぼくだけの君はとてもかわいい」と言いながら腕をさすったり抱きしめたり、自分の事をやさしく扱ってくれた。だから私も、依然として顔をマスクで覆われたままではあったが、ベッドの上で男と一緒に過ごす時間に愛着のようなものすら感じるようになっていった。
そんな事を何度も繰り返す内に、私の身体は徐々に違う反応を示すようになっていった。それはまるで、私の中に、未知なる新しい感覚器官が生まれてくるかのようだった。
階上のベッドに寝かされるといつも、せわしない息づかいと共に、身体じゅうを男の舌が時にゆるく時につよく、吸いつきながら舐めまわしていく。それはマスクに覆われていない首筋から始まって胸の方に下りていき、ここに来たばかりの時とくらべ丸みをおび大きくやわらかくなってきた私の胸を、撫でたり揉んだりしながら存分に舐めまわし、ときおり乳首につよく吸いつく。
普段から真っ暗な闇の中で過ごしている私は、視覚を補うために他の感覚が異常に発達でもしたせいなのか、身体の上をゆっくりとなぞるように這いまわる、まるでそれ自体が独立した生き物ででもあるかのような舌の、ぬめるような生暖かい感触に、飛び上がるほど敏感に反応した。そして私のやわらかい部分をしっとりと撫でまわす太い指が、なにかを確認するかのように徐々に奥へといざなわれていくと、私の身体はまるで私のものではなくなったかのように、勝手に大きく波打つように動きだす。
すると何本かの指が抜かれてかわりにもっとずっと固くて太くて熱いものが私のなかに入り、さまざまな方向に突き上げられると、視界が閉ざされているのにも関わらず私は、まぶしい光に包まれていくような、あたまの芯が痺れるような激しい高揚感におそわれた。
闇の中で研ぎ澄まされた私の鋭利な神経は、もたらされるものすべてを増幅しながらさらに上へ上へと昇りつめていき、私はやがて恍惚の果て、目がくらむようなむしろ神々しいとさえ思える、大きな光の渦の中へと我知らず流されていくのだった。
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