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「どういうことだ」
「あら、きちんと聞く気になったみたいね。偉い偉い」
ランスベルドが問いかけて来たので、わたくしはそう言って、先程の続きを話した。
「フェミーヌとして生まれ変わったわたくしに、妹が居るけれど。その妹がリナベルお姉様の生まれ変わりよ。後でゼロットも呼んで皆に会わせますからね」
「リナベル様……」
「あらあら、シャーリー。リナベル様でなくて、お祖母様でしょう?」
「余のお祖母様はリナベル様ではなく、ベルデアお祖母様です」
「困った子ねぇ。ゼロットにもシャリオットにも言い聞かせたはずよ? あなた達はわたくしの子でも孫でもない、と」
「ですがっ」
シャリオットは何かを訴えかけようとして結局黙って俯いた。
「困った子ねぇ。わたくしはゼロットを可愛い甥っ子だと思っているし、シャリオットはその息子で可愛いと思っているわよ。わたくしが生んだ子ではなかったけれど、ゼロットを息子だと思って育てたし、シャリオットは可愛い孫だと思って育てましたよ」
わたくしがそう言えば、嬉しそうにシャリオットが笑った。
「でも生まれ変わる前から言い続けてきたわね? ゼロットを産んだのはわたくしではない。あなたも本当の孫ではない、と。それは紛れもない事実だと」
「……はい」
「いい子ね。さて、ここからが出来ればあなた達にも知られたくなかった話。ですが、ランスベルドがこのような子ならば致し方無し。昔話を致します」
ゆっくりとシャリオット・ラムヘル・アーレンを見て良く聞きなさい、と目で語る。それからランスベルド・ホーンラム・アーズルを見て口を開いた。
「まず、ランスベルド。あなたは曽祖父にあたるトーレックにそっくりな性格だわ。そしてそれは……国に良くも悪くも影響を与える。あなたのために言いますが、ティリアレーナを束縛するのはやめなさい。その理由をこれから話してあげます」
最後まで黙って聞くよう、目線で語って続けてホーンラムとアーズルを均等に見た。
「ホーンラム、アーズル。あなた達は王太子殿下の側近で有りながら、ランスベルドによってティリアレーナが追い込まれているのを知っていて手を貸すとは何事ですか! 真の側近ならば自分の命を省みず諫めるものでしょう! 本当に死を覚悟したならば、親にも陛下にも直訴出来たはずです! それが出来ないとは嘆かわしい!」
2人はグッと言葉を呑み込む。わたくしに責められている内容に反論出来ないのだろう。
「もう賢いあなた達は解っていますね? わたくしが王妃・ベルデアの生まれ変わりだ、と」
わたくしが尋ねれば無言で跪いて臣下の礼を取った。よしよし。聡い子は好きだわ。
「偉いわね。きちんと理解出来て。……まぁあなた達に同情はします。ティリアレーナを孤独にするなんて最初は反対していたのでしょう? けれど、王太子殿下命令であり……おそらく、家族の命を盾に取られた。といったところ?」
わたくしが尋ねれば2人共驚愕の顔でわたくしを見て……「「何故……お分かりに」」と同時に呟いた。
「言ったでしょう。わたくしの書類上の夫、いえ、結婚式も挙げただけの夫にランスベルドはそっくりなのです。わたくしと、トーレックは白い結婚でした。ゼロットは、わたくしの姉とトーレックの子なのです」
そうしてわたくしは、昔話を切り出した。
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