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「意味あったよ。助かった。楽しかったし……」
「ふうん、そう。楽しかった?」
タチバナが、こっちを見た。
リンと涼しげな一重の目で、まっすぐにあたしの目の中をのぞきこんで、そのまま視線をそらさない。
あたしは、思わずたじろいだ。
「あ、アメちゃんなめるっ?」
無駄にヘラヘラ笑顔を作り、カバンの中から、アメちゃんの小袋を取り出して、「はいっ」と、タチバナの手のひらに乗せる。
タチバナは素早く指を折り、あたしの指先をアメちゃんごとつかまえた。
「……っ!」
ささくれひとつない、しなやかな長い指。短く整えられた爪の形。
冷たい手だ。
あたしの手が熱いのかもしれない……。
そっと表情をうかがってみる。
タチバナの口角は、ほんの少し上がっている。
黒い瞳は、甘い笑みを含んで、意地悪そうに光っている。
……あたしの反応を見て楽しんでいるの?
そんなふうに見つめないで。
息が止まりそう……。
「――す、好きなの」
あたしは言った。
タチバナの目が優しくなった。
「うん。つきあおうか」
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