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部活
あたしたちの演劇部は、ふだん視聴覚室で練習している。
ある程度広さがあって、放課後、他に使われない教室、っていうことで、視聴覚室になったんだと思う。
体育館なんかは、バレーだのバスケだのでいっぱいだしね。
その視聴覚室で、あたしは大道具係の山吹と一緒に、ベニヤに新聞紙を貼る、という作業をすすめていた。
ボンドが乾かないうちに素早く、しかも新聞がシワにならないように、ふたりで息を合わせて貼っていく。
このひと手間をくわえることで、ベニヤの湿気を新聞紙が逃がし、のちの塗装が美しく仕上がるのだという。
ドアが開いて、フラリとタチバナが入ってきた。
あたしは「タチバナッ」と語尾にハートマークをつけて駆け寄りそうになり、「タチッ……」のところで、思いとどまった。
……なんでラインを返さないんだ!
おかげで眠れなかったんだからね!
「あー。……手伝う?」
パネルを見下ろしながら、タチバナがそう聞いたので、あたしはツーンとそっぽをむいた。
山吹が、
「こっちは大丈夫。お前はキャストだべ。真面目に練習しろ」と言って、シッシと手で追い払う。
あたしは、こっそり、手のひらをグーパーしてみた。
あのしなやかな指の感触は、まだ残っている気がするのに。
タチバナは、そっけないくらい、いつも通りの態度だった。
あれは、あたしの夢だったかな……。
「お前ら、どうなん?」
山吹が声をひそめた。
「どうって?」
「結局、タチバナにフラれたん?」
「ふ、フラれてないよ!」とあたしは叫ぶ。
「つきあってるの……。たぶん。おそらく。夢じゃなければ。でもね、ラインの返信がなくって」
「なんだそら」
山吹が笑った。
「あいつは気まぐれだからなあ。
単に面倒だったんじゃね? 平和だよなあ」
どこが平和というのだろう。
あたしにとっては大問題だ!
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