告白

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告白

「タチバナ、あたしとつきあって」 秋の日の放課後、正面玄関。 タチバナは、スニーカーのかかとに指先をつっこんで、「え?」と言ってあたしを見た。 一重(ひとえ)の目を軽く見張って、くちびるの間を少し開けて。 あたしは、思わず目をつぶった。 残像が、ユラユラまぶたの裏で揺れる。 いくつも並んだ背の高い靴箱、ほんのり漂う靴のにおい、遠くから響いてくるブラスバンドの練習の音。 「……今度は何? ベニヤ? 角材?」 「何って」 「買いにいくんだろう?  そういや山吹(やまぶき)に言われてた。小峰(こみね)が資材買うから付き合ってやれって」 タチバナは気だるげに腕時計に目をやると、ああ今日はサボろうと思ったのに……、などとボヤいている。 あたしは一瞬ポカンとし、それからあわてて笑顔を作った。 「そ、そうなの、買出し! 付き合ってくれるよね!」 心臓がバクバクしていた。 悟られないように、あたしはうつむいてローファーのつま先をトントンする。 あたしたちは演劇部員だ。 公演で使う大道具のパネルを作るために、以前も買出しに出たことがあった。 そのときは山吹(やまぶき)も一緒で、顧問の車に乗って、だったけど。 だけどあたしが今日「つきあって」って言ったのは、もちろん買出しに、なんかじゃなくて……。
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