帰り道

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「小峰は、下の名前なんて言うんだっけ?」 「知らないの?!」 「ん……」 「ほんとに?」 「……みそら」 「知ってるじゃん!!」 あたしはタチバナの肩をグーで殴った。 「ふふ。……みそら。ほら、当たり棒、あげるから」 「え、すごい。当たったの?」 名前を呼ばれただけで、気持ちがはずんで、あたしは差し出されたアイスキャンディーの棒切れを、受け取った。 ……だけど裏を見ても表を見ても、とくに何も書いていなくって。 「……はずれじゃん!」 タチバナが、おかしそうに肩をゆすった。 「もう、うそつき!」 ……でもこんな嘘なら可愛いじゃない? あたしは、タチバナの笑いじわを見つめて思う。 あたしはタチバナのことを、まだほんのちょっとしか知らないのかもしれない。 だけど、タチバナが、あたしの卵焼きを、サラリと許してくれたみたいに。 あたしもあなたを、いつも大きな気持ちで受け止めたいな……。 だからねえ。 もっと笑って、あたしのことからかって、その瞳にあたしを映して。 子猫がじゃれあうみたいに、一緒にいたい。 あなたが好きなの。 見上げた真昼の空は、嘘みたいなブルーで。 さっきのソーダアイスの色みたい。まぶしい。 あたしは、アイスの「はずれ棒」に、くちびるを押し当てて、そっとキスをした。 (おしまい)
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