三千字のラブレター

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 貴方にお話ししたいことがたくさんあるのです。将棋を指しながら、集中出来ないから静かにしろと言いつつも優しい笑顔で私の話を聞いて下さっていたことは知っています。まだ、生まれてもいない孫の話を聞いて、お友達にお話ししていた事も知っています。  本当に、貴方は不器用な人ですね。  貴方が帰ってきたら、一緒に迷路本をやってみませんか。孫と一緒にやってみたのですが、思いの外難しいもので頭を使いました。線がたくさんあって長時間やっていると目が痛くなってくるのですが、とても面白いものでした。きっと貴方も真剣にやってしまいますよ。結構上手く作ってあるものなんです。道をなぞっていって、行き止まりにならないとその道が間違っていたことに気付けないんですよ。どの道が正解なのか全く分からなくて、孫たちに教えてもらいながら一時間半くらいかけてやっと一つ出来ました。貴方もきっと私のようになりますよ。でも、負けず嫌いな貴方はなかなか出来なくても、機嫌が悪くなりながらでも最後まで一人でやり遂げてしまうのでしょうね。そして、こんなものたいしたことなかったと言いながら、出来上がった鉛筆の道を嬉しそうに私に見せにくるのでしょうね。貴方用の本も買ってきたのですよ。  孫たちには本当に良いものを教えてもらいました。  そう言えば、貴方に良い知らせが二つあります。  一つ目は、去年息子に美人のお嫁さんをもらったこと。  二つ目は、その息子が子どもができたと報告してきたことです。  娘の方の子どもたちと合わせると三人目の孫になります。まだ性別はわからないそうですが、どちらにしてもおめでたい事です。さらに賑やかになりそうです。  二年連続でおめでたいことがあったと、貴方に報告する事が出来て嬉しい限りです。本当に私は幸せ者だと思っております。  貴方と一緒になった時は好き嫌いが真反対でどうなる事かと思っておりましたが、今になってみればよかったと思っております。長年、連れ添った身としては別れが早かったのではないかと思っております。
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