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──暗闇は経験しておいた方が良い。
それは、ここに来て最初に言われた言葉だった。
「今日は定員割れだって」
「ええ、珍しい。でも確かに、あちらの今日は天気が良くない」
「それは関係ないよねぇ」
ふふふ、と木の葉が揺れるような細やかな笑い声が辺りを包む。その僅かなざわめきが小さく周りに風を起こしている。
雲の流れを見下ろして、それらは夕闇に紛れ行く昼間の星を眺めていた。
「じゃあ、今日こそ試してみる?」
「そうだね、そうしようか」
「でもやっぱりこわいな」
「そうだよね、こわいよね」
近くで集まって話し合っているのを、こっそり聞いておく。
成り行きがどうなるのか、それ次第でわたし自身もどうしたら良いかを知りたくて。
「どうしようかなぁ」
「どうしようかねぇ」
──やめて、おこうかな。
暗闇に入るのは、まだ怖い。
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