至る病

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 毎朝決まって父は「具合悪くないか?」と私に訊ねた。  私は父から「おはよう」と言ってもらった覚えがない。私が「元気だよ」とか「どこも悪くないよ」と返すと、父はわかりやすく肩を落とした。明らかに父は私を不健康な子どもに仕立てたがっていた。  父は『か弱い子どもを加護する立派な父親』であることこそが自分の役目であると、誰よりも優先して子どもを守り、子どもから信頼され、自らも子どもを愛さなければ自分に存在意義などないと心から信じていたのだ。そういった点では、父の方こそ毎朝「具合は悪くないか」と確認されるべき対象だったのかもしれない。
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