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「スサノオを…頼みます。あの子はあなたやツクヨミと違って、愛された経験のない子です。どうか、あなただけはあの子を想ってやって」
「わかりました。すぐ宮に呼び寄せます」
イザナミは再び首を振った。
「いいえ、それはなりません。イザナギに殺されてしまう。あの人は産まれたばかりのカグツチも私のためと言って殺した。あの人はそういう人です。だからあなたが守ってやって。スサノオをお願い」
イザナミはそう言って、目を閉じた。閉じた目から涙が溢れる。
「ああ…母上」
その魂が飛び去ろうとしているのがわかる。その瞬間に母の心を占めていたのは自分ではなかったという事実がヒルメを打ちのめしていた。
それにしても初めて聞く名前だった。母の話からすれば年の近い兄弟のようだった。
ヒルメにはたくさんの兄弟姉妹がいて、会ったことのない者たちもいる。ヒルメはツクヨミと一緒に、父母の暮らす宮で育てられた。特にヒルメは次代の女王になる子供として、特別扱いをされていた。他の兄弟とはそう親しく付き合っているわけではなかった。事実上ツクヨミとの2人姉弟のようなものだった。
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