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のちにそれはタケハヤの1人合点で、ヒルメには何も知らされずにいたとわかった。
ヒルメの怒りを知って呆然としたまま出立したが、居ても立っても居られずにその日の夜中に一度戻って来てしまったのだった。
「あの時は済まなかった。私もそなたが木の国に行くことになるなんて、あの日まで知らなかったのだ。今になれば事前に知ったら私が阻むかもしれないと考えて周りの者が黙っていたのだろう」
艶のある黒髪を撫でながら謝るヒルメに、
「いいえ、きっと皆は私がいなくなればいいとそう思っていたのです。ともすれば死んでくれればよいと」
と剣呑なことを言う。
「なぜそんな…そなたは王子なのだぞ。そんなことはありえまい」
タケハヤは黙っていた。
「そなたはもしや、父親のことで悩んでいるのか?」
タケハヤは黙ったままでいたが、少し肩が揺れたのをヒルメは見逃さなかった。
「そなたは父上と母上の子だ。母上は他の男に気持ちを奪われたことなどなかった」
ヒルメは言い聞かせるように言った。
「そなたは確かに私の弟だ」
「それでよろしいのですか?」
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