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タケハヤは顔を伏せたまま呟いた。
「私たちは姉と弟。私はこの世で一番愛しい女子が、他の男に娶られるのを見守らねばならないのですか?」
ヒルメはついに最も聞きたかったが、聞いてはいけなかったことを耳にしてしまった。
「タケハヤ…それは」
想いが溢れて声にならない。タケハヤが自分を最も愛おしい女性だと思ってくれているだけで、涙がこぼれるほど嬉しかった。
(私も同じだと言えたら楽になれるのだろうか)
泣くまいと目を閉じながら、落ち着くために小さく息を吐く。
タケハヤは小さな声で続けた。
「いっそ母上が裏切っていてくれたら、私はあの男の血を受けない体で生まれてこられた。あの男の狂った血が私の中に流れていると思うと…時々あのまま命を失っていればよかったと思うのです」
タケハヤはすでに父母からの仕打ちで十分すぎるほど苦しんでいる。甘えたかった幼い頃、母は遠い存在だった。会ったことのない母を思って暮らしていたことを思うと、ヒルメの胸は苦しくなる。
「私はどんな生い立ちであろうと、そなたが生きていてくれて良かったと思うておる」
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