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ヒルメはやっとのことで言った。
「その言葉は本当ですか?」
タケハヤが震える声で言う。
「本当だと、どうやって証を立ててくださるのですか?」
タケハヤはやっと顔を上げた。
(なんと澄んだまなこなのだろう)
出会ったときの面影はあるが、この3年続けた鍛錬の賜物か、肩や首の逞しさが目を引く。生来の整った顔立ちが日焼けして精悍さが増して、黙っていても若い女子たちの噂になりそうだった。
(もう少ししたら誰を娶るかという話になって、いずれかの相応しい姫が選ばれ、別宮を建ててそちらに移っていくのだろう。そうなれば私のこの想いも消えて無くなっていくのだろうか)
じっと見つめるだけのヒルメに焦れて、タケハヤは首を左右に振った。
ハッとしてヒルメが体勢を崩したのを支えようと立ち上がったタケハヤが勢い余って共に倒れ込んだ。寝台の上で折り重なった2人は、間近で互いの顔を見つめ合うことになった。
タケハヤの瞳は青みを感じるほどの漆黒だった。
(初めて会ったときには感じなかったが、不思議な色の瞳だ。昔見た夜の海のように、怖いぐらいの漆黒…)
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